2008年10月25日(土)

夕方、居間へ下りて行くと、
いつもは見ることのないテレビのチャンネルを
母が入れていた

画面に映し出されていたのは、
見覚えのある顔...

大原まゆ*”さんだ

『きっと私はがんばれる 2』

という番組として、
4時半から放送されていた

このときすでに15分経過

が、ほぼ観ることができた


まゆさんは結婚をして
現在、東京に住んでいるらしい

“結婚”――

まず、そのことに驚いた

きっとまゆさんの中にも
葛藤があったと思う

結婚は、
大きな決断だったとも思う

乳がんになって、
たぶん子どもも産めない

生きている環境はそれぞれ違うけれど、
普通で考えればこの状況で
結婚は自ら引いてしまうように思う

病気のまゆさんを
まるごと受け入れた彼もすごい

というのも、
現在、まゆさんは再発のため、
決して「体調がいい」とは言えないのだ



今回、札幌に帰ってきたのは、
ピンクリボン運動のためらしい

昨年の9月に
北海道の一部で公開された映画、
『Mayu ―ココロの星―』が
今年になって宮崎県や東京で公開され、
あちこち飛び回り、とても忙しそうだった

体調が悪くても、
今こうして頑張っているのは、

「自分が生きているときに
 できることをしたい。
 みんなに知ってもらいたいことを伝えたい』

との思いで、
精力的に活動をしている


再発は、確か昨年、映画の制作中に、
「骨転移をしている」と公表し、
点滴を受けていた
(たぶん、抗がん剤だろうか)

新たな転移がみつかったかどうかは
わからないが、
とても呼吸がつらそうで、
時折、咳き込んでいた

当初は、「あと2年」と
告げられていたようだ

今回、そんな話をはじめて知ったので、
とても衝撃を受けた


「今年で乳がん患者になって5年。
 今年の秋を迎えることができるなんて、
 誰が思っていただろう」

と、語っていたまゆさん

彼女が死を覚悟していることは
ありありと見てとれた

それだけに、悔いなく、
しっかり生き抜こうとしている強さが
伝わってくる


「一時は身体のことを考え、
 “あれは食べちゃダメ”など
 やっていたこともあったけれど、
 今はおいしいものを食べ、
 好きなものを飲む」

と、語っていたまゆさん


そんなつらい身体で、
まゆさんは必死にこう訴えていた

「自覚症状があってから病院に行くのは
 “検査”です。
 そうではなく、
 なにもないうちに“検診”に行ってもらいたい。
 早いうちにみつけた方がいいんです。
 命、金銭的なこと、
 不安、周りにかける心配...。
 そういうことを考えたら、
 絶対、早い方が負担が軽いんです」

と...


まゆさんの切実な心の叫びが心に響く

経験したひとでなければわからない、

死を目の前にしたひとにしかわからない、
熱い思い


でも私はひとに検診を勧めたりはしない

なぜだろう...

自分でもよくわからない

たぶん、他人の領域(人生)に
口を出したくないというか...

強制的になるのも嫌だし...

結局は、自分のことは
自分で守らなければいけないわけで

それは(検診を受けるかどうか)、
自分の意思のわけで...


それに端から行かないひとは、
いくら訴えたところで行かない

きっと、
「忙しい」とか、
「なにかあれば病院に行く」とか、
「自分は大丈夫」とか、
「がんになったって、別にいい」とか、
思ってる

検診の大切さを訴えれば訴えるだけ、
きっと、ウザいと思われるだけ

それに検診に行って、
万が一、そのひとにがんがみつかっても
責任もとれない

本当は、
今、みつかってよかったのだけど


私は自分がこんな経験をしたにもかかわらず、
まだ、「検診に行ってください」とは、
云えない

本当は
訴えていかなければならないことなのだろうけど、
まだ云えない


がんになったことはやっぱりつらいから

「知らないほうがよかった」と思った

でも、検査しなければ進行していく


でも、“がん”なんて、やっぱりなりたくない




  ――後 記――

   ※大原まゆ

    北海道室蘭市出身・札幌在住
    21歳で乳がん発覚

    ブログ『Mayuとあなたと。』
       『キセキノート。奇跡の軌跡...☆』
    乳がん闘病記『おっぱいの詩』
    闘病記映画化『Mayu ―ココロの星―』

    2009年5月9日 26歳
    乳がんの転移により永眠





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