今日は21.6℃
清々しい...
暑くもなく、寒くもなく
雨も降らず、
気持ちのいい昼下がり
そんな中、『がんサロン』へ――
重い足を引きずりながら
バスの停留所に着くと、
空には部分的にハロが出ている
天気予報では、
「今週、今日が最後の晴天。
風もなく穏やかです」
そう言っていたが、
日傘をしっかり握っていないと
飛ばされそうな風だ
今年はすでに2か月ほど
強風が続いている
「ようやく強い風から解放される...」
と、思っていたが、
そうはいかなかったようだ
たまたま座ったバスの座席
窓のほうを見ると、
『優先席』のシールが貼られている
「まぁ、乗客も少なしいし、
一応バッグに
“ヘルプカード”もつけてるし、
いっか...」
と、そのまま陣取る
最近、なんとなくこのカードに
気持ちが頼っているような気がする
サロン会場へ行くいつもの
“心臓破りの坂道”
今ではすっかり、
“股関節悪化の坂道”と化しているが...
上りきると、
公園の入り口が見えてくる
もう6月
さすがに緑が濃くなっている
中に入ると、一面、シロツメクサ
「あれ?
前からシロツメクサあったっけ...」
人間の記憶とは、曖昧なものである
花壇にも花が植えられている
木々も鬱蒼としてきた
噴水は、まだ水が冷たそうだ
木々の緑....
青い空...
白い雲...
このコントラストが
たまらなく美しい
「ただ話を聞いてほしいだけなのに」
「“うん、うん”って
聞いてくれるだけでいいのに」
「アドバイスがほしいわけじゃない」
「なのに、少し不安を口にすると、
“もっと頑張りな”と言われる」
「“そんなことばかり言っていたら、
病気に負けるよ”って...」
「“もっと前向きにね”って...」
「やっぱり、
がんを経験していないひとには
わからないよね」
そんな話を聞いていたら、
「がん患者の思いは
昔と変わらないな」
そう思った
逆を返せば、
「今も言われることは
同じなんだな」
がんの治療は日進月歩
なのに、がん患者の心は置いてきぼりだ
やっぱり“がんになる”ということは
不安や悲しみ、つらさがつきまとう
「いいよ、いいよ。
ここではなにを話してもいいんだから」
「ここはみんな話を聞いてくれるから」
「ここで愚痴を言っても、
誰もなにも言わないから」――
そう、
ここは、
不安なこと、つらいこと、
なんでも話せる場所
理解もしてくれる
誰も否定はしない
みんな同じ思いをしてきたから
夕刻
少し赤く染まった南の空に、
白い月が浮かんでいた
明々後日が満月
天気予報は曇りか雨
観られそうにないな...
さ、
あしたからまた日常――
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