手術から一晩経った母は、
意外と元気そうにしていた
心配していた声も、
まだほとんど出せないだろうと思っていたが
かなり出ていて驚いた
「声、ずいぶん出てるね。
リハビリすれば、きっとまた仕事できるね」
「そうかい?」
以前の母の声とは違い、
かなりハスキーボイスにはなっていたが、
リハビリもしていけば、
きっとまた、声を出す仕事ができそうに思えた
いや、そう願おう
が、やはり、傷が痛むのだろう
首に両手を当てて、つらそうにしている
それでも母からは、
これからしっかり生きていく姿勢が感じられた
私も病室では、極力明るく振る舞った
退院日から、休むことなく、
家のことをしなければならないのは結構きつい
このまま入院を続けて放射線治療を受けた方が
楽なのは間違いない
母も、
「入院して治療をした方がいい。
お父さんのことは心配しなくていいから」
そう言ってくれたものの、
長期間、父一人にしておくのは、
やはり不安が大きい
ある程度のことはできる父ではあるが、
それでも家の中のことは、
女性のようにはできない
『私が“乳がん”ということで
一緒に生活するとなると、
父自身も私に気を遣うだろうな...』
実際に“普段の生活”に戻ってみると、
思っていた以上に腕が不自由だ
これまでは簡単に取れていた目の前のものも、
今は手を伸ばしても届かない
これまでは簡単に持っていたフライパンも、
今は重くて持ち上がらない
これまでは簡単に持てたはずのまな板も、
楽に持ち上げられない
『こんなに動かないのか...。
こんな物も持てないのか...』
と、ショックの連続だ
何をするにも、これまでの倍の時間はかかる
そんな自分に苛立つ
『この左腕は、本当に動くようになるのだろうか。
痛みはなくなるのだろうか。
麻痺は戻るのだろうか...』
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