りかこの乳がん体験記

 30代でみつけた左乳房のしこり。「“良性”だからそのままにしておいていいよ」。視触診だけで簡単に下された診断。そして私は医師の言う通り放置した。 4年8ヶ月後、大きくなったしこりを切除。“良性”だと思っていたのに、病理検査の結果は悪性――乳がんだった・・・。

2016年10月

“子どもが産めなくなった”という劣等感

20歳を過ぎたあたりから、

「結婚はいつ?」


結婚をしたと思えば、

「子どもはまだ?」――


今でこそ様々な配慮から、
そのような言葉も聞かれなくなったが、
私が20代の頃は、そんな時代だった

“結婚はするもの”

“女は子どもを産むもの”――


子どもの頃、
そんな時代に育ってきた私は、

“結婚をして子どもを産むことは当たり前”

なことだと思っていた...


  “子ども”って、やっぱり可愛いのかな...

  私は手を上げられ、
  投げかけられた言葉に傷つきながら生きてきた

  だから、正直、
  “親の愛情の深さ”というものを
  理解できないこともある

  そうやって育てられた私は、
  自分が産んだ子にも、
  同じことをするような気がしていた

  いや、実際、
  “虐待を受けて育った人が母親になると、
   自分の子どもにも手をあげる”

  というデータがあるらしい


  “子ども”って...

  10ヶ月間、胎内で育て、
  お腹を傷めて産んだ子って...

  何物にも代え難い宝なんだろうな...

  かけがえのない命...なんだろうな...


そんなことも実感できずに、
私は今、ここに生きている


守るべきものもなくて、

一人の闘病が気楽でもあり、

孤独でもあり...


両親に孫を抱かせてあげられなかったことは、
最大の親不孝なのだろうか


私の乳がんがわかって、

「治療をしたら子どもが産めなくなる」

と、母に告げたとき、母はどう思っただろう...


妹に子どもが生まれたとき、

安心感のような...

これで、もっと、
私は不要な存在になったような...

複雑な思いがした


妹から送られてきた赤ちゃんの写真も、
まともに見ることはできなかった

写真が送られてきたことが、
子どもが産めなくなった私への嫌味なのか...

と、思ったりもした


父に、

「これ、やる」

と、妹の子どもの
命名の色紙を手渡されそうになったときは、

『なんて無神経な親なんだ』

そう思った


私は一生、“母親”にはなれない――


午後の空


ふと、昨年亡くなった母のことを思い出して、
そんなことを想う、
物憂げな秋の昼下がり――



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忘れてはいけない病気のこと ~最近の体調~

ホルモン治療の影響から、ようやく抜け出し――

長い長い闘いでもあり、
長い長いつき合いでもあった

それでも完全に
体調が戻った訳ではないが...


が、、

突然、泣き出したくなったり...

何をしたらいいのかわからなくなって、
立ち尽くしたり...

激しいホットフラッシュと寒気に
交互に襲われたり...

常に胸がむかついていたり...

めまいがしたり...

倦怠感があったり...

眠れなかったり...

手足が痺れたり、
皮膚が焼けるように熱くなったり...

得体の知れない不安感に苛まれたり...

24時間、休むことなく、起こっていた現象


今では、

歩くスピードが戻ったことも、
息切れを起こしながら昇っていた階段も、

テキパキ動けるようになったことが爽快だ

...と、同時に、
乳がんであることを忘れる時間も増えた

が、“忘れる”ことが、
果たしていいことなのか――


乳がんであることは、
事実であり、現実である

もちろん、忘れることなんてできるはずはない

なかったことにもできない

が、病気のことを、
どこかで軽く見ている自分もいる

“乳がん”という現実が...

“再発”という不安が...

心の奥で、薄らいでしまっている

しっかりとこの現実と向き合い、
受け止めていかなければ...


“完治”まで、あと10年と3ヶ月――

  長いなぁ
  まだ半分か...

  それでも20年経っても、
  不安は残るのだろうな...



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来年の干支?

「そろそろ年賀状の準備を...」

と、

昨日、

一文字で描ける言葉を考えていた


そして、

思いいた文字をいくつか書いてみた


が、

なんとな~く、どれもしっくり来ない


「そうだ! “干支”を書いてみよう!!」


来年の“干支”って、なんだっけ...?


「おー!! これだ!!」

        羊 ①

“羊”!!


      羊 ②


いっぱい書いてみた


羊 ③



一通り書いて、

片付けを終えて......


そして、

しばらくして気がついた


来年の干支は、

“酉”であることに......


「......」


言い訳をすると――


最近書いていた年賀状は、

あまり
“干支”を意識したものにはしていなかったし、


去年、母が亡くなって、

年賀状は書いていないし......


「きちんと確認してから

 書けばよかった......」



なんだか、“羊”という字が

おかしな字に見えてきた......



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雪の朝――

雪の降る朝――


灰色の空からひらひらと

真っ白な雪が舞い降りている


まるで春に降る牡丹雪のよう


窓の外に目を遣りながら飲むコーヒー

雪の降る朝

静寂が流れる


一瞬の、穏やかな朝のひととき――



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視触診は、しない方向で――

“乳がん検診”といえば、
これまで推奨されていたのは、40歳以上

検査法も、
医師による視触診とマンモグラフィだ


が、近年の乳がんの若年化

そして、がんを見つけられない、
いわゆる、“見落とし”も問題になっている

そんなことから、ここのところ、
マンモグラフィとエコー検査を
併用する動きが出てきている

「もっと早くにそうすればいいのに...」

と、簡単に思ってしまうが、
“集団検診”を考えた場合、
なかなかそうもいかないのだろう

...とは言っても、“がん検診”である

見つけられなければ意味がないのだ


そして、
マンモグラフィとともに行われてきた、
医師による“視触診”

今は廃止の方向に進んでいる


確かに、
マンモグラフィ検査でわからないがんが、
視触診で見つけるのは不可能に思われる

それに、“検査のため”とはわかっていても、
医師に乳房を触られるというのも
抵抗がない訳ではない


事実、私は初診時の視触診で
がんを見抜いてはもらえなかった

コロコロとよく動いた私のしこり

『がんのしこりは、ベタッとはりついて動かない。
 動くしこりは良性のしこり』――

そんな定説通り、
私のしこりは良性腫瘍の“乳腺線維腺腫”であると、
敢えなく診断を受けたのだ


『身体の中にあるがんなんて、
 人が触って判断できるのか』――


欲を言うなら、
もっと精度の高い検査機器が開発されれば...

もっと欲を言うなら、
痛みを伴わない検査法があれば――



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りかこプロフィール

 
■2009年5月より
医療機関開催『がんサロン』発行による『がんサロン通信』にて、体験記・エッセイ執筆
(■2026年2月よりピアサポーターとして『ピアサポーター通信』を新たに執筆開始)

■2010年9月
市広報にて体験記掲載

■2011年8月31日
乳がん体験記『4分の3の乳房(ちぶさ)』書籍自費出版

■2012年1月21日
講演『乳がん闘病記 ~「ありがとう」と「感謝」の気持ちに至るまで~』

■2012年4月5日
FMオホーツク『乳がんについて』FPとの対談

■2012年4月
キーストーンアライアンス『百年シナリオ通信』記事掲載

■2013年6月より
医療サイト『ドクターズガイド』、ブログ掲載

■2016年9月14日
フジテレビ『めざましテレビ ~がんの見落とし~』ブログ紹介・インタビュー放送

■2020年3月
一般社団法人全国がん患者団体連合会『がん教育外部講師講座』修了(北海道教育委員会にがん教育外部講師として登録)

■2021年10月
『がん予防功労者表彰』(道・市・健康づくり財団・対がん協会4社共催)

■2023年5月
北海道がん患者連合会『がん教育講師派遣養成研修会』終了

■2025年10月
北海道医療ソーシャルワーカー協会主催『がんピアサポーター養成研修会』受講終了

■その他
講演、ピンクリボン運動、ピアサポーターとして活動中

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■国家資格
1994年10月、調理師免許取得(食と健康を考える乳がん経験者)

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■2024年より
子ども虐待防止『オレンジリボン運動』サポーター

■2024年10月
市民観光アンバサダー就任

乳がん履歴
■2002年3月3日(日)
 左乳房にしこりをみつける  

■2002年3月4日(月)
 視触診の結果“良性”と診断

■2006年11月8日(水)
 左乳房のしこり再受診  

■2006年11月15日(水)
 左乳房のしこり一部切除
  (外科的生検)

■2006年11月28日(火)
 乳がん告知      

■2007年1月11日(木)
 左乳がん手術

■2008年7月8日(火)
 局所再発の疑いで、
 細胞診・組織診(結果は良性)

■2009年2月17日(火)
 対側(右)乳がんの疑い
 (前年からしこりあり)経過観察

■2010年2月16日(火)
 右乳房細胞診(結果は良性)
手術・治療の経緯
■がん細胞の種類(しこり3つ)
 ・明細胞がん(クリアセル)
  (化学療法・放射線が効かない稀ながん細胞)
 ・非浸潤性乳管がん

 ・核グレード 2
 ・ER  90%
 ・PgR 10%
 ・HER2(-)

■術 式
 ・腋窩リンパ節郭清
 ・乳房扇状部分切除(4分の1強切除)

■治 療
 ・放射線23回照射
 ・LH-RHアゴニスト製剤、
  4週間毎、2年間(25回)投与
 ・抗エストロゲン剤(クエン酸タモキシフェン)、
  5年服用
その他の病歴
■2006年5月
 子宮筋腫(漿膜下筋腫)核出術(10㎝の開腹手術)
  ・10cmの筋腫   1個
  ・8cmの筋腫   1個
  ・2~3cmの筋腫  4個

■2023年7月18日
 ・臼蓋形成不全発覚(先天性)
 ・変形性股関節症に進行(両足)

■2024年10月
 骨粗鬆症判明

■2025年10月12日
 突発性難聴発症(左耳)
母の甲状腺がん(乳頭がん・転移性がん)
■2006年11月(私の乳がん告知の約2週間前)
 甲状腺がん告知

■2007年1月(私の乳がん手術の2週間後)
 甲状腺摘出手術・頸部リンパ節郭清

■2007年5月
 術後療法(RI治療・1回)
  通常2~3回の治療が必要なところ、
  1回の治療で身体の中にがんがないことが
  確認される

■2009年5月
 頸部再発
 (切除手術後、放射線治療を受ける)

■2012年5月
 肺転移確認

■2015年5月
 小脳転移確認

■2015年7月18日
 永眠

  ※遠隔転移後の治療法・治療薬なし
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