ここは、とある百貨店の服飾売り場――

そこにあるのは、
きれいに陳列されている可愛いバッグや色とりどりの財布たち...

『あ...これいいかも...』
『やっぱり、こっちの方がいいかな...』

どんな服装に合うかな...
どんな時に使おうか...

様々なシーンを思い浮かべて頭の中はフル稼働


そんな時だった
楽しいひとときを遮るかのように、それは突然やってきた

“ホットフラッシュ”だ

ホットフラッシュが来ると、身体は色々な症状に襲われる

暑さはもちろんのこと、のぼせ、倦怠感、
そして呼吸が荒くなり、どうしようもない具合の悪さに陥る

『なんでこんな時に...』

でも、いつやってくるのかわからないのが“ホットフラッシュ”
しかも、1時間に何度もやってくる
だから、本当は、“こんな時”も何もない

そして私はその場から動けなくなった

さすがにここに座り込む訳にはいかない
立ったまま、ホットフラッシュが去るのを待つ

しかし、1分や2分で治まるものではない
特にめまいはなかなか抜けない

それでも今はただ、楽になる時が来るのをじっと待つしかない――


少し経った時、何かを感じた
それは、私を見ている視線だった

その視線は、隣りの売り場のマネキンさんから注がれていた

『ヤバい。具合悪いの、バレたかな...』
早くこの場を立ち去った方が良さそうだ

「お客様、どうかなさいましたか?」
そう聞かれる前に、ここから逃げよう...

そう思っていた矢先、彼女がこっちへやってきた

ツカツカ...と急ぐ訳でもなく、心配そうな顔をしている訳でもない

怪訝に思った
そんな彼女もまた、怪訝そうな顔をしていた

『いや、これって...』

マネキンさんはくっつきそうなほど私に近づいた
そして、頭の先から足の先まで舐めるように私を見回した

『やっぱり...』

私は完全に“万引き犯”と思われていたのだ

『ちょっと待ってよ!! それってあんまりだよ...』

私は彼女に目を合わせた

彼女は私の視線を逸らしながら、
「いらっしゃいませ」と、心のこもらない台詞を吐く

『万引きする気か? そうはさせるか!!』

そう言わんばかりに、彼女は私の周りをぐるぐる歩く
そう...ゆっくりと、プレッシャーを与えるように...

そんな態度に私は耐えられなくなった

誤解されたまま、このまま退散するのは悔しかった
でもそうするしかない...

こんな悔しいことって...
こんなされ方って...


その後、私はその店に入れなくなったのは、言うまでもない

だって、“要注意人物”として、間違いなく警戒されているからね...

  
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